12/9(土)、気持ち良い秋晴れの中、第1回 鎌倉・湘南有用植物塾を開講させて頂くことができました。
この日はじめに歩いた獅子舞では、太陽の光に照らされた見上げるほど大きなモミジの、素晴らしい紅葉を見る事ができました。
鎌倉宮から獅子舞までは、スミレ、ホトトギス、クマザサ、ヤダケ、ヤブラン、カナムグラなどを観察しながら歩きました。
クマザサは熊笹ではなく'隈笹'で、秋頃より葉の内から外へ、徐々に葉の縁が白くなっていきます。生薬名は淡竹葉で、清熱、除煩、止渇等に利用できます。
ヤブランの葉はジャノヒゲより葉が太く、その紡錘根は生薬で大葉麦門冬といい、滋養強壮、咳止めなどに利用します。
ヤダケは鎌倉に由来が深く、真っ直ぐで丈夫であること、またこの地域一帯豊富に自生していることから、鎌倉武士が使う弓矢の矢に多用されていました。意外にも竹ではなく笹の仲間で、生長後も皮が桿を包んでいる事から笹とわかります。春に美味しく頂くネマガリダケも、同じく笹の仲間です。
二階堂川の源流に添い、岩壁に囲まれた古道の山道に入ってから目に飛び込んできたのは、木の幹に沢山連なって発生している、薬用のコフキサルノコシカケ、そしてシイタケ、猛毒のニガクリダケです。
紅葉の見事なイチョウは雌雄異株で、薬効が高いのはやはり子孫を残す雌の方です。クワもまた同じく、利用するのは雌の方が良いそう。
そして天園休憩所近く、六国峠の岩上の展望地では、山に囲まれた鎌倉市街、稲村ヶ崎の先に広がる相模湾まで見事な眺望に感激しました。
お昼休憩後、鎌倉最高地点の大平山山頂附近では、庭木などでもよく見かけるヒノキ科のビャクシン(イブキ)や、赤い実を付けたビナンカヅラ(サネカズラ)、スギを観察しました。
ビャクシンの葉はヒノキ科だけあってとても良い香りがします。
ビナンカズラの実は南五味子といい、滋養強壮や鎮咳に利用できます。また刻んだ蔓を水に浸けると粘性が出るため、かつて寝癖直しなど整髪に使われたのが植物名の由来です。
スギは沢山の実をつけていましたが、薬酒として利用する事で、花粉症の緩和に効果があるそう。
さらに歩くと、山道から少し下がった斜面に、ハート形の葉に特徴的な模様のあるカンアオイ(カントウカンアオイ)を見つけました。
暗紫色で鐘形の花は殆ど土に埋もれています。根は生薬の土細辛で、鎮咳に利用できるそう。アオイは'葵の御紋'のモチーフなのも納得できます。
そして足元には真っ赤に綺麗に紅葉したウルシ科のハゼノキの葉、見上げると立派な大木でした。雌雄異株で、すぐ近くの雌木には沢山の実がなっています。これを圧搾し採取した木蝋は、和蝋燭や軟膏などに利用されています。
この他にもハリギリ、オニドコロ、カイガラタケ、フユイチゴ、ヤブミョウガ、ヤブコウジ(ジュウリョウ)、ヤブニッケイなど鎌倉の多様な植生を知る事ができ、また美しい紅葉や景色も満喫できた1日でした。